ジブリ実験劇場「ON YOUR MARK 」にみる私達の道③

ニュース体験.jp / 社会 , / 公開日:2015/07/30

■ジブリ実験劇場 「ON YOUR MARK」解釈

さて本題です。この6分半をどう解釈し、そこから何を見るか。ここからは本ムービーそのものの解釈と、ナウシカの続編としての解釈とパラレルに捉えながら考えて行きます。実際のムービーを見ながら読めるようムービー時系列で記します。

(ジブリ実験劇場「ON YOUR MARK 」にみる私たちの道②はこちら)

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『地上の世界は、もう人が住めない世界』

さてまずはイントロです。
地上の世界が映し出され、のどかな自然と閑静な住宅。その後ろに大きく聳え立つ“何かの物体”。そして放射能標識のあるトレーラーに乗った誰か2人がその何かの物体を背に進んでくる。実はいきなりオチや結論を急がなければいけないようなリスキーなイントロなわけですが、ここでどういうことを表現しているのかと言うと、今地上がどういう状態であるか、なぜ地下都市が存在するかの前提作りでしょう。映画のイントロとしてそもそも最もらしい役割そのものです。もともと人類は地上に住んでいて街も築いていたが、科学の進歩、人間がより自分達の都合で地上を変えて行ったプロセスの中で大規模な放射能汚染が起こり、それによって人が住めない世界になってしまったという状態です。

[ナウシカの続編として解釈すれば(以下、続ナウシカ解:)最終話のまた千年以降先の浄化された後の話となるでしょう(腐海は甚大な汚染を持った大地をわずか千年程の年月で浄化していく、と原作でも記載がある通り)。浄化後、人は元の自然を取り戻し街を築くが、また人為的な汚濁を繰り返していた。]のどかな自然と集落の中にも虫や鳥も人影も全く無い。おそらく少なくともイントロに出てくる集落においては人は住んでいないようです。このようなさわやかな晴れの日において、家屋のすべての人たちが窓をすべて閉鎖しているのは単純に不自然です。それでも放射性物質を避けるための室内避難として窓を閉めている可能性もありますので、先に後ろの大きな建物について言及します。

 

背後には相当大きな“何かの巨大物体”がありますが、これは「メルトダウンにより甚大な被害が発生し、壊滅して廃棄された巨大原子力発電所」です。宮崎駿監督もアニメージュvol.206にて、あの奇怪な建物についてチェルノブイリを引き合いに出しています。原発と言うにはその姿はとても妙で、無味だし無用な出っ張りやつぎはぎ感、いびつさがあると思われるでしょう。しかしこれは大量の放射性物質拡散を避けるために外から鉄やコンクリートなどの楯を張った姿なのです。いわゆる「石棺」と言われるもので、実際に大爆発事故を起こしたチェルノブイリ原子力発電所の第4号炉においてもそのように無味につぎはぎされた状態になっています。(チェルノブイリ原発第4 号炉の中には今も「象の足」と呼ばれる超がつく放射能の塊が残っている)

 

sds*チェルノブイリ原発第4号炉を囲う石棺

スクロールしていく中で出てくる放射能標識の下部に、よく見るとロシア語らしき文字も記されており、まさにチェルノブイリ原子力発電所事故を髣髴とさせています。話を戻せば、高濃度に汚染された街は部屋に閉じこもったからと言って生活していけるようなものではありません。よって、あの集落は廃墟と考えられます。(いずれにせよ、人間が住んでいる可能性を感じさせないほどの雰囲気を作り上げていますが)[続ナウシカ解: 後ろの奇怪な巨大建物は、シュワの墓所の変形後の姿と考えることも可能です。形は異なるが黒色やブロック積みで築かれたような体裁が似ている。ナウシカ、オーマによって墓所は破壊、殺されたはずだったが、強い生命力で再度回復した。最終話で墓所はドロドロと崩れていったので、この形になったと言うことは復活後の姿ですがまだ完治はしていない。新しい世界のための人類も結局保存ができ、浄化後、彼らが地上世界に生きる人類となっている。しかし、個人的にはこの説は難しいと思っています(面白いのですけど)。これでは放射能標識が説明できないし、新人類にとっての聖なる墓所の付近で元気に歌を歌い続ける人や動物たち
がいても良いものです。墓所は真っ黒という表現も原作でされていますし。そして私がこの説を最も避けたい理由として、結局10 年以上連載を続けてきた、あのナウシカの全ての行動は、何も未来を変えることが出来なかった(墓所の意図したままになってしまった、全てムダだった!?)ということになっています。これはあまりにもでしょう、原作への冒涜です。そのため続ナウシカ解としても、やはりここは廃棄原発でしょう。]

 

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