ジブリ実験劇場「ON YOUR MARK 」にみる私達の道②

ニュース体験.jp / 社会 , / 公開日:2015/07/22

■ジブリ実験劇場 「ON YOUR MARK」のストーリー(解釈無し)

では次に、ジブリ実験劇場「ON YOUR MARK」そのものについてです。 できれば一度先にムービーをご覧いただいたほうが良いと思います。 一部外部サイトや wiki の表現を借用させていただいています ———————- 地上波が放射線で完全に汚染されてしまい、 人類は地下に住むようになったいつかの未来の都市が舞台。 あるカルト教団「聖 NOVA’S」の施設を襲撃、制圧した警官隊。 その中の警官 2 人は、教団施設の奥で翼の生えた少女を発見する。 2 人は彼女を救助するも、研究資料として今度は政府機関の施設に連れ去られてしまった。 2 人は彼女を空へ帰そうと奮闘を始める。 ※ここからは2つのストーリーに分かれている 1. 彼女を空へ帰そうと研究所の防護車に乗り脱出するが途中で警察組織に阻まれる。 登っていた回廊は崩れ、車と共に2人は手を引く彼女と共に地下深くへ落ちていく。 2. 彼女を空へ帰そうと研究所の防護車に乗り脱出するが途中で警察組織に阻まれる。 登っていた回廊は崩れるもジェット噴射で飛び地下都市の出口へ向かうことが出来る。 人が住めなくなった危険な地表へ2人と彼女は突き進む。 そして地表へ出て、笑顔で2人は彼女を解放する。 彼女はそのまま大きな青空へ羽ばたいていく。

(ジブリ実験劇場「ON YOUR MARK 」にみる私たちの道①はこちら)

■宮崎駿監督 アニメージュ vol.206 インタビュー

宮崎駿監督自身に ON YOUR MARK について聞いた貴重なインタビューがあるんです。制作者本人の言葉ですから、これがどうしても核心にならざるを得ないわけでこれ以上の解釈の余 地はないのでは?という話になるわけですが、本書はそこから考える私たちの道の話ですので、 ここではこのインタビューもあえて明確に提示しておこうと思います。 ※アニメージュ側:AM /宮崎駿監督:宮崎

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AM 「警官」と「天使」なんて、まるで押井守さんの作品のようですね。

宮崎 押井さんが天使が生まれるの、生まれないのとか、もったいぶってやっているから、さっさと出しちゃった(笑)。 といっても、天使だとは言っていないし、鳥の人かもしれない。それはどうでもいいんです。

AM 6 分 40 秒の中に、映画 1 本分の内容が詰まっていると感じました。

宮崎 暗号のようなものは、いっぱい入れてあるけれども。音楽映画だから、見た人の感じたように受け取ってもらって かまわないんです。

AM 冒頭の、のどかな田園風景の中に建つ奇怪な建物は何ですか。

宮崎 どう解釈してもらってもかまいませんが。その直後に出てくる放射能注意のマークのついたトラックを見て、 何となくわかってもらえればいいと思うんです。地上には放射能があふれていて、もう人間は住めなくなっている。 でも緑はあふれていて、ちょうどチェルノブイリの周囲がそうだったようにね。 自然のサンクチュアリ(聖地)と、化している。 で、人間は地下に都市を作って住んでいる。実際はそんな風には住めなくて、 地上で病気になりながら住むことになるとは思いますが。

AM このアニメは「On Your Mark」の、音楽映画作品として作られていますね。

宮崎 「位置について」という意味のタイトルだけれど、その内容をわざと曲解して作っています。 いわゆる世紀末の後の話。放射能があふれ、病気が蔓延した世界。 実際、そういう時代が来るんじゃないかと、僕は思っていますが。 そこで生きるとはどういうことかを考えながら、作りました。 きっとそういう時代は、ものすごくアナーキーになっていく一方で、 体制批判というようなことについて、ものすごく保守化しているんじゃないか。 それはまだ失うものがあると思っているから。 何にもなくなると、ただのアナーキーになっていって、のたれ死にが始まるんです。 そういうものを紛らわしてくれるのは「ドラッグ」や「プロスポーツ」や「宗教」でしょう? それが蔓延していく。 そういう時代に、言いたいことを体制から隠すために、隠語にして表現した曲と考えてみた。 ちょっと悪意に満ちた映画なんです(笑)。

AM 例えば「いつも走り出せば、流行の風邪にやられた」という歌詞の、 「流行の風邪」というのは、放射能や病気に覆われた世界のことでしょうか?

宮崎 (否定も肯定もせず)地球全体の歴史から見れば、人間の問題なんて流行の風邪みたいなものですからね。

AM ……二人の警官が救い出す天使は、混沌とした世界の一筋の希望のようにも見えます。 「僕らがそれでも止めないのは……」という歌詞の通り、天使を救出するシーンが何度も繰り返されていますが。 何度かの失敗の後、混沌とした世界から、一筋の救いのように彼女は青空に飛び立つ。 でも、警官たちは地上に取り残されて……。

宮崎 彼女が救世主だったり、救出を通して彼女と心の交流があったというわけではないんです。 ただ、状況に全面降伏しないで、自分の希望、ここだけは誰にも触れせないぞというものを持っているとしたら、 それを手放さなければならないのなら、誰の手にも届かないところに放してしまおうという。 そういうことですよ。 放した瞬間に、心の交流がちらっとあったかもしれないけれども。それでいい、それだけでいいんです。 ……きっとまた彼らは警官の仕事に戻るんです。戻れるかどうか知らないけれど(笑)。

AM 戻る世界は、また「流行の風邪」の世界。 宮崎 結局、いつもそこから始まるしかない。メチャメチャな時代にも、いいことや、ドキドキすることはちゃんとある。 ナウシカの「我々は血を吐きながら、繰り返し繰り返し、その朝を越えて飛ぶ鳥だ」です。

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■ジブリ実験劇場 「ON YOUR MARK」と「風の谷のナウシカ」の関係

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宮崎駿監督は「暗号のような物をいっぱい入れてある」と語っており、見る側によって異なる 解釈が存在します。よく言われるのは「ON YOUR MARK は風の谷のナウシカの続編である」 ということですが、本書ではこの前提からの解釈のみに絞らず、パラレルに行っていきたいと思います。 たしかに世界観は多くを踏襲している気がします。ナウシカが最終話で一度完結したのが 1994 年 1 月 23 日であり、ON YOUR MARK の制作開始時を考えれば宮崎駿監督自身もナ ウシカの世界が頭の中で温まったまま生き続けていたでしょうし、アニメージュ Vol.206 でも ナウシカのメッセージを監督本人が引用していることから、ナウシカと ON YOUR MARK は 大きな幹として共通のメッセージが用いられていると言うことは間違いありません。 しかし、監督自身があのナウシカのような少女について「天使か鳥の人かはどうでもいい」と 言っていることや(ナウシカ=鳥の人/原作より)、ON YOUR MARK の制作を始める上で最 初に作られる設定画には「天使」と明記されていたという話からも、ON YOUR MARK を解釈する上で、原作ナウシカ(本版)が作り上げている数々のバックヤードを必要とするかしないかでいうと、“必要なのではない”、ということが分かります。 そして何より本書の主題は監督が込めた意図の向こうに見る、私たちが今も考えるべきことを記 していければと思っているため、ナウシカの続編ということによる縛りを設けない解釈を同時に 走らせたいと思います。

ジブリ実験劇場「ON YOUR MARK 」にみる私たちの道③はこちら