ジブリ実験劇場「ON YOUR MARK 」にみる私達の道⑧

ニュース体験.jp / 社会 , / 公開日:2015/07/30

『“研究機関(政府?)が、希望を預かる。』

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彼女を助け出す事に成功した喜びもつかの間。研究材料としてある組織が引き取りに来ます。この研究組織が乗ってきた船を見てみるとここにも放射能標識が大きく表示されており、中にいた研究者らしき人間達も体の数倍もするであろう分厚い防護服をまとっているあたりからも、彼らはこの翼の生えた少女自体が放射能を持っているものであると認識していることが伺えます。そして貴重な研究材料と判断して放射線を発さないための収納袋のようなものに入れて連れ去ってしまいます。おそらく、この組織は、連れ去りに関して警察が特に何の抵抗もしてないことからも、警察にとって無関係な機関ではない、警察と同じく「国に属するもの」、政府関係の研究機関なのでしょう。2人の抵抗の末強奪したというような感じでも無いですから。その政府研究機関がなぜ彼女を研究するのかと言えば、おそらく「放射能汚染の中でも生き続ける生命体」「羽の生えた未知の生命体(もしかしたら地上で生きていられるであろう生命体)」としての興味でしょう。言い換えればそれは政府にとって「もう一度地上で元のまま生きるという希望」だったのかもと思っています。汚染された地上でどのような生態なら生きていけるのか、どうすれば生きていけるのか、そのDNAなどにヒントがあるに違いないと思ったのでしょう。しかしそれが全生命のためではなく、きっとまたもや人間たちのためだったのでしょうが…。

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[続ナウシカ解: 例えば現人類を守った貴重な人間の魂として。歴史でナウシカの存在は有名であり、腐海と共に生きてきた、汚染に耐えうる当時のDNAや今への変遷進化の過程を知るための研究材料としてもさることながら、巨神兵を知る術やどうすれば自分達の言うことを聞かせ、活用できるのかなども研究し実用化しようと考えた。今振り返っても、ナウシカは原作で宗教にも国家にも振り回され、戦った。常に大きな十字架を背負いながら。」

『これで、よかったのだろうか・・・? 葛藤 そしてON YOUR MARK』

なんとなく後ろめたい気持ちを持ちながらその場を去る2人。そして居酒屋で釈然としない表情で酒を飲む。2人は酒を飲みながら、言葉を交わしませんが、同じことを考えていたのでしょう。彼らの考え悩んでいるあのシーンは、「どうして渡してしまったのだろう」「このままでいいのか」という後悔の表情のように思います。共に生きるための希望。それを政府という“体制”に託したわけですが、それでも不安に思っているところにこの地下都市においての政府の位置づけが伺えます。そして2人は少女(希望)をもう一度解放するために立ち上がります。

手放さなければいけないくらいなら、誰の手にも届かないところに放してしまおう!」それを行うことが、その先どういうことになってしまうかは考えていません。突き進もうとしています。実際、作業に移ったあとの彼らの顔はとてもひたむきです。飛鳥的一人はパソコンを前に(恐らく違法アクセスによる)情報収集を図ります。彼は警察の中でもイケメンとして人気なのか、それとも副業でアーティストをやっているのか(それはどちらでもよいですが)、傍らにはプレゼントや花束が置かれています。一方のチャゲ的一人は潜入のためのセキュリティ突破装置及び催眠ガス噴射器かを作成します。手元にはCHAGE とプリントされたマグカップがあります。きっとお気に入りなのでしょう。ちょうどチャゲがそのセキュリティ突破装置のベース完成を報告しにきた風な時に、飛鳥は重要情報の発見かに成功します。来たぞ!という表情です。彼女の収容場所やセキュリティコードの解読あたりか。それとも少女が無事飛び立てる場所の発見か(既述のとおり彼らはこの間地上にも出ていると考えています)。

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そして、もう一度居酒屋のシーン。しかしここでは、1回目のような葛藤の表情ではありません。強く意志を持った目をしています。覚悟を決め、そのスタートラインに立ったのです。切実なる希望を、誰にもジャマされないところへ(≒本来いるべき所へ/あるべき姿へ)解放しに行くのです。ON YOUR MARK….

(※蛇足:2回目の居酒屋シーンで後ろに見える居酒屋メニューには海産物系のものはなんらかの科学で生み出したものが置かれています。(塩サバ(合成)、バイオ蛸酢など。)たしかに地下都市ですから、海のものはなかなか簡単には手に入らないのでしょうね。土地や大気だけでなく、海も汚染されているのでしょう。)

『ただ、彼女を解放したい。』

胸を張って歩く2人。「あるこ~、あるこ~」というあのジブリのテーマが流れて来そうです。研究所に侵入し、用意した研究員の防護服を纏い、仲間を装い研究員へ催眠ガスを吸わせて突破します(膨らむ姿はちょっとかわいい…)。中では少女が、厳重に管理されながら何か激しい実験を行われています。どんな実験かは既述のとおり、この政府直属の?研究機関にとって、この翼の生えた少女は未来を生きるための希望と映ったわけですから、その方法を得るための実験でしょう。少女の入っている別室シェルターの雰囲気からしてもより高濃度の放射線、その他の抵抗を与えているか、もしくは彼女のエネルギーを吸い上げているようにも取れます(少女のDNAを採取し人口投与できるように培養する等々)。

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少女がこの研究機関の元で羽ばたけないのも、人間の科学で失ったものをより高度な科学でコントロールしようとすること(そしてそれがおそらく人間のためであること)、その辺が原因になるのではと思います。詳しくは描写がありませんが、決してムービー内ではポジティブに描かれてはいません。明確な否定はしていませんが、少なくともムービーの主役であろう2人にとってみては、異なった考え方であったのでしょうし、先ほどの解釈をすれば生きる全てにとっての「共に生きる」という希望からは大きく屈折してしまっています。

囚われた少女をチャゲ的彼が作った機械によりコード解除、見事彼女を奪取することに成功します。その瞬間、警報が館全体に鳴り響く。当然ですが、侵入と少女の強奪が見つかったのです。逃げなければなりません。

すぐに脱出を試みる2人。チャゲ的彼は防護マスクを外してしまいます。実験により高濃度の放射性物質を与えられていたかもしれない彼女は強い放射能をまとっている可能性もありました。しかしチャゲの顔からはそういう懸念は一切感じません。彼女は汚染はされないと分かっていたのでしょうか。いやそれよりも、そんなことは関係ないのでしょうね。チャゲ的彼の顔は「やってやった!」という満足した顔です。政府研究の手から再度取り戻せたのです。予定通り設定しておいたであろうトレーラーに乗り込みます。ちなみにこのトレーラーの車型はイントロのそれ(解放作戦時に事前に地上へ出たときのもの)と同型です。急いでたまたま入
ったのがこの型だったとも考えられますが、それは1つめのエンディングだった場合ですし、前述の通り事前に2人は地上に出ていた前提ならば両エンディングにおいてもこのトレーラーは任意のものです。特に2つ目では過程で新たな改造が見受けられるので、これは彼らが任意に選定し、事前に脱出のための改造を行っていて、選んで乗り込んだと言えます。さあトレーラーで研究機関の外へ脱出します。

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