ジブリ実験劇場「ON YOUR MARK 」にみる私達の道⑫

ニュース体験.jp / 社会, / 公開日:2015/07/30

『この星、生きる生命全てにとっての、共に生き続けるという希望』
~私たちは、これからどう生きるのか~

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翼の生えた少女はあのとき、何を見つけたことで、驚き、そして微笑んだのでしょう。広がっていた緑の世界でしょうか。いや、それはEXTREME DANGER を越えたときから十分見えていたはずです。しかも実際、既述のとおり放射能汚染はそう短い期間で戻るものではありません。全地球全生命の希望にとって、見た目だけ美しい世界というのは満たされるものではないはずです。もちろん、それでも「自然のサンクチュアリ」と監督が言っているように、あまりネガティブには地上を描写していないようですが。結局、彼女が見たもの、あの2人が彼女に見せることができたものは、あのムービーの中には描かれてないんです。彼女が高い位置で、遠くを見る目をしています。ある程度遠くのもの、高いところからの方が良く見えるものでしょう。かといって、最後に見える森の先の摩天楼かというと、それも違う気がします。彼女が都市を見て喜ぶのは不自然です、獣や森が住めない場所ですから。

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さて、彼女が見たものについて。それはここも何かひとつにする必要はないものでしょう。彼女が見たものは、その希望を実現する術(すべ)またはその姿なのだと思います。既述のとおり、持つ希望は一人ひとりによって違いますから、それを実現するための道も姿も異なります。
では逆算した解釈である「この星、生きる生命全てにとっての、共に行き続けたいという希望」において。彼女が驚きながらしっかり見ていたあの場面の後ろでは、あの巨大廃棄原発が相当の存在感を出しています。このシーンもどう読み取るかで先に見えているものが変わって来そうです。彼女が見たものは、背後に見えている巨大廃棄原発と対称にあるものだと思います。全地球が自然に共存している、実現されたその姿、その世界、なのかもしれません。(2 人がいるところよりも、もっとずっと遠いところに)
しかし、それがどのような術(すべ)で、もしくはどのような姿なのかは私には分からないです。どこかでも語られていたことですが、ここが人間の抱える矛盾のような気がします。私たちは、もはや十分に自然の尊さを知っています。世界的に認められ保護される場所もどんどん増えていくと思います。しかし、その一方で、今までの暮らしを捨てられません。どんなにエコロジストを気取ったところで、もはや私たちは人工で生み出された技術が使える世界でなければ生きられないのです。ですから、きっとその姿が「人も動物も植物も皆仲良く共存している」と都合よく書いたところで、それって具体的にどういう状態よと聞かれれば、むしろ不自然な画になっているかもしれません(人が電気を使わない、飛行機に乗らない、動物と共に歌を歌い、森に洞穴を掘って住む…そんな姿は無責任なキレイごとではないでしょうか)。
監督も、もののけ姫を制作する前に、次のような趣旨の発言をしています。(当時)世界がこんなにも混沌としているのに、そうではない整然とした・解決されることを提示していて良いのだろうかと。そこで「これからは解決できない課題を提示するんだ」と話されたそうです。まさにこのON YOUR MARK もそうだと思います。

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2011 年3 月の大地震・大津波のように、自然との闘いに人間は多分いつまでも永遠に負け続けてしまうのでしょう。万が一我々人間が勝つときがあるならば、それは多分、もう人類の存在も終わるときかもしれません。そもそも本来戦いなんてものは無いはずです。個にして全、全にして個。だからこそ人間が全を汚す悪だという解釈もしたくはありません。自然の驚異も、人間の行為もそれぞれあってのこの星です。
しかし今、私たちという個が全を上回るほどの知恵(ネガティブな意味での知恵)を身に付けつつあります。そしてそれはそう簡単に止まるものでもないのかもしれませんし、いずれ黒い世界に変えてしまうのかもしれません。それでも「我々は血を吐きながら、繰り返し繰り返し、その朝を越えて飛ぶ鳥」です。そのような世界の中でも、生きねばなりません。
必要なのは、いつか来てしまうかもしれない未来を考え、個である私達ひとりひとりが全を想う、全であることを認識する、全の希望を持つこと考えることなのかもしれません。人間のみ、ある個に囚われた希望ではなく、そして誰かに頼るでもなく。全面降伏をするのではなく、走り出す。仮に未来に対する絶望があったとしても。
世の中、順調に行き出したと思えば、窮地に追い込まれたりする。それの繰り返しで成り立っているものだと頭では理解できても、くじけずに前に進むのは容易ではない。それでも走り続けることで、夢や目標に近づいていけるし、そこに力が生まれてくる。「走り続けるものの中にこそ力は存在する」。
 
最後に。2つのエンディングがある意味について。私はこれは、「やり直し」の可能性を信じたいという願いではないかと思います。(かなわない、ありえないことかもしれないけれど、“再生”への切なる希望)不完全な私達は失敗を繰り返します。それでも屈せず、希望のために、立ち上がろう。位置について。
 

ジブリ実験劇場「ON YOUR MARK 」にみる私達の道 はこれで締めさせて頂きます。お読み頂き、誠にありがとうございました。

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