ジブリ実験劇場「ON YOUR MARK 」にみる私達の道⑩

ニュース体験.jp / 社会, / 公開日:2015/07/30

『夢の斜面見上げて。走り出した、その先は (結末B) 』

ここで再度場面が戻ります。宗教団の全滅から少女発見、解放したいという脳裏の直感、脱出をリバイバルします。(直感は簡略された別の画を使用。空に解き放った天使を下から見ている)同じく高架道路は破壊し、宙へ放り出されるわけですが…2つめのシーンでは、トレーラーにこれも事前に2人が供えていたのであろう動力を使って、飛び始めます。そう、実現のために走り出した2人は、自分がやらなくてはという意志の元で、さらに力を発揮するのです。走り続けるんだ、自分達の力で希望を解き放とう。
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トレーラーは外壁のアパート?に激突。暗い外壁は所得の低い人たちが住むところのようで、先ほどまで見えていた都市の雰囲気とは一変。制作当時の90年代も、中国は都市と農村戸籍住民との格差が大きかったが、(日本人が考えているよりも大きく想像を超えて格差が存在する)その格差を象徴したかったかのように、アパート周りは中国語のような文字記載に変わります。さて、激突し破壊したトレーラーを乗り捨て、例の黄色のアルファスパイダー?に乗り換える。この車は準備していたものか、それとも偶然近くにあったものなのか…。私の解釈では、“事前に用意してはいなかったけど、偶然にもイメージしていたあのオープンカーがあった”ということだと思い込んでいる。完全にただの思い込みです。一応理由ですが、まず仮に用意したものであれば、あれだけ周到な用意をした彼らですから、放射能汚染された地上に出るためになぜわざわざオープンカーであるスパイダーらしき車を選ぶのかもいまいち腑に落ちない。しかもスパイダーを使う前提なら、あのように壁側の民家に頭から突っ込むことも想定していたと言うことだが、そんな大迷惑を初めから設計するような男達でも無いように思っています。まあ、あえて言えば衝突したあたりは非常に貧しいエリアであり、オープンカーのような車を持つような人たちはいないだろうと考えられますが…。ただむしろ、車自体を持っていなかったかもしれないので、車が停めてありそうなところまで彼らは走ったのでしょう。さらに言えば、イメージに合っていたということだけでなく、オープンカーが最もドアをこじ開ける手間も省けて、脱出のためのジャックがし易かったのではないでしょうか。
オープンカーで外へ向かっている時点で、彼らはもう覚悟をしています。さらに進む3人。目指すは地上。「注意阳光」「不保証生命」とある通り地上は死の世界。ひとつ目の看板の、放射線標識で「日光に注意」と言う注意勧告を見る限り、大気も相当壊された世界なのでしょう。

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『何が清浄で、何が汚濁なのか。 ~地上の世界~』

ついに外の世界に飛び出してしまった3人。甚大な汚染がシーンからはっきり見て取れる。イントロに見ていたような青空も植物もここにはない。紫の大地。黒い空。
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しかし少し走れば、ある堺からあの緑が始まっている。これは一体どういうことなのか?それは彼らが走ってきた後ろの背景から見て取れる。t5t5
この複数の建物。これが何を表すかは、これは「原子炉」そのものでしょうか。もしくは地下で出た汚染物質の「排気口」のようなものでしょうか。相当な数です。いずれでもそのはずでしょう。地下都市は見てきたとおり大都会でハイテクノロジー。かつ日の光がほとんど入らない世界です。現代では考えられないくらいの電力を必要とするでしょうし、排気するものも多大でしょう。彼らは地下の生活のために、逆に(どうせ汚染された)地上にそれらを置いたのです。(ちなみに、現代では原子力発電の廃棄物は地下に埋められています。向こう100 年は人が絶対触れてはいけないような放射性物質を厚い容器やガラス固化体にして埋設します。日本では青森に埋めていますが、いつまでそんな超危険物をこの地球に埋め続けるのでしょう)今までどれだけの放射性物質や汚染物質が放たれていったのでしょう…。EXTREMEDANGER の内側の方(安全とされている方)が、むしろ全く自然も生きものも存在しないような世界です。空の色さえ黒く暗い。大気自体も相当汚染されているようです。結局人間はいつも自分達のために、自分達の世界を壊し続けるのでしょうか。
 
一方、EXTREME DANGER とされていた外に広がっていたのは、明るい空、青々とした自然。一体どちらが人が住める場所なのでしょう。同じ放射性物質が出ている大地で、どういうコントラストを現しているのだろうか。ここに見るのは、やはり自然の逞しさかもしれません。逆に言えば、人間さえいなければ(人間が人間のための手を加えなければ)、自然はもう一度豊かな世界を取り戻す力を持っているとも言えます。チェルノブイリもそうなのです。あの事故から25年。大地はまた自然を取り戻しつつあります。様々な生きものが生息も出来ているようです。もちろん既述のとおり、セシウムの濃度は予想以上に下がっておらず、生態系としても、他地区では見られない奇形が生息しているとも聞きます。まだ人が住めない街なのは変わりません。得やすいものは失いやすいという言葉がありますが、自然はとても得づらく、非常に失いやすいということです。
dede出典:gaagle.jp/
*チェルノブイリの今。豊かな緑が回復しつつある
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